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しいんとしたとこ [TRIP]


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濃霧に包まれてしまった。
真っ白なエーテルは、空間をというスペースを失って、さらに重力さえ感じなくなりそうだった。
唯一の頼りは1メートル先の白線。
重力を感じないということは、人間の死を意味するんだっけ....?
すごく怖かったけど、
こんなに見えないなんて!すっぽり全部を包んでしまうなんて!と一瞬ワクワクしたけど、
やはり怖くなった。
「なすすべがないよ」
私はそう小さくつぶやいて、必死のUターンをして、山を降りた。

ワクワクしたのは、
しいんとしたところを感じたからなのかも。
山だけど。みずうみではないけれども。

人間の魅力は、たぶんそのあたりから発する霧だから。



「みずうみ」   茨木のり子

〈だいたいお母さんてものはさ
 しいん
 としたとこがなくちゃいけないんだ〉

名台詞を聴くものかな!

ふりかえると
お下げとお河童と
二つのランドセルがゆれてゆく
落葉の道

お母さんだけとはかぎらない
人間は誰でも心の底に
しいんと静かな湖を持つべきなのだ

田沢湖のように深く青い湖を
かくし持っているひとは
話すとわかる 二言 三言で

それは しいんと落ちついていて
用意に増えも減りもしない自分の湖
さらさらと他人のおりてはゆけない魔の湖

強要や学歴とは何の関係もないらしい
人間の魅力とは
たぶんその湖のあたりから
発する霧だ

早くもそのことに
気づいたらしい
小さな
二人の
娘たち
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すごく素敵な本。


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